
最近では空き家問題が叫ばれるようになり、ある意味での身近なトピックとして耳にする方も多いのではないでしょうか。
経産省が発表した「平成 30 年住宅・土地統計調査」によると、空き家は848万戸、空き家率で13.6%という数字が出ています。
これからまさに家を売ろうと思っている人にとってみれば「そんなに空き家が増えて家は売れるのかしら?」と思ってしまいますよね。
ましてや築年数が30年、40年、それ以上経過した家を売ろうと思っても売れないのでは?なんて不安になります。
結論から言うとたとえ築古の家でもちゃんと売ることはできます。不動産投資を行なっている著者の目線で古い家の売り方についてじっくりまとめてみました。
気になるのは築年数
これから売ろうとしている家の築年数によって売りやすい、売れづらいは影響を受けますが、実際自分の家の築年数に対してはどうなのかが気になるところ。
一般的には木造の戸建なら築年数が20年を超えると「築古」と呼ばれたりしますが、これは法定耐用年数が関係しています。
構造別法定耐用年数
構造 | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造(3mm以下) | 19年 |
軽量鉄骨造(3mm超4mm以下) | 34年 |
鉄筋コンクリート | 47年 |
もちろん法定耐用年数内の物件がいいに決まっていますが、市場には耐用年数が切れた物件がものすごく沢山売りに出されており、更に価格次第でしっかり売れていっています。
不動産賃貸業をやっているとよく見るのですが、築50年、60年、なかには100年超えた物件でも条件次第で売れています。
築年数が40年を超えると実需向けの住宅ローンではなく、収益物件として売れる確率が高くなるのですが、それでも売れていることに違いはありません。
空き家問題の数字は実際どうなのか?
冒頭でかいた経産省発表の空き家率13.6%についてですが、これに対して反論を掲げているメディアがあります。
独り歩きしている日本の空き家率は13.5%だが、これは住宅総数を分母にしている。しかし、同じ空き家でも持ち家と賃貸では意味合いが全く異なる。持ち家の空き家率は低い一方、賃貸だけを見ると23.3%にも及ぶのだ。これは非常に高い数字である。
引用:「空室ばかり」と言われる賃貸住宅の家賃が上がり続ける理由
どうも「賃貸物件も含めた空き家率」として発表しているとの主旨ですね。
具体的な数値を列挙した上で最後を下記のように締めくくっています。
結果として、空き家問題とはもっともらしいデマでしかない。空き家という名のデッドストックがあるからこそ、募集物件が限定され、賃料が底堅くなっているというのはいかにも皮肉な話である。市場は経済合理性のある動きをしているだけで、物件を新規で建てたり取り壊したりする地主も、建設を促すハウスメーカーや工務店・建設会社も、不動産投資家も、全ての関係者は空き家を問題視していない。
引用:https://diamond.jp/articles/-/174049?page=4
要するに空き家問題と叫ばれているけど実情としては全然空き家は増えていないでしょう、という論点です。
これは実際に不動産賃貸業を行なっている著者も感じていて、空き家は日々売りに出されていますが、条件のいいものは実需、収益物件どちらにしてもすぐに売れていきます。
また実際に著者はもともと空き家だった戸建を購入して賃貸に出している物件をいくつも持っているのですが、募集するとすぐに埋まってしまいます。
このことから考えても、特に空き家問題が深刻になっているとは感じません。
もちろん空き家を壊して更地にすると固定資産税が一気に跳ね上がったり、そもそも再建築不可の物件を保有し続けているオーナーさんも多いでしょう。
建物が建っている場合と建っていない更地の場合、なんと3~4倍もの固定資産税額が変わってしまいます。
出典:再建築不可物件を高く売却するための方法とNGな事例
あまり過度に心配する必要はなく、売れる時に早めに売り出すことのほうがよほど大切ですね。
築年数別古い家の売り方4パターン
いくら売れるとは言え、状態や条件、かかる費用によって売り方を検討するほうがより短期間に売れやすくなります。
前提条件として、実需向け(住宅ローンを使った一般のかたがお客さん)が一番高く売れる可能性大です。
続いて収益物件・古家付き土地(不動産投資家向け)>更地売り(不動産会社または実需または不動産投資家)>不動産買取(不動産会社)の順番に売値が下がってくるのが一般的。
- 実需向け(住宅ローン利用の一般の方向け)
- 収益物件・古家付き土地(不動産ローンを使う投資家向け)
- 解体して更地売り(実需または不動産投資家または不動産会社向け)
- 不動産買取(不動産会社向け)
では実際にどのような売り方がよいのか、築年数別に5つのパターン別に見てみましょう。
①築20年~30年の家の売り方
この場合はいくつか考えられますが、まだ家として十分に使える状態のものが多いでしょう。
下記の方法が挙げられます。
- 実需向けにリフォームして売り出す
- 実需向けにリフォームしないで売り出す
1.リフォームしてから売る場合
家自体に問題もなく、さらに内外装もしっかりリフォームされていてきれいな状態になっていれば一番高く売れやすい物件と言えます。
ただしリフォーム費と売値とのバランスが重要なので、やりすぎるのはよくありません。
ぱっと見てきれいになっている状態であれば良いでしょう。リフォームにかかる費用とそれによって売れる可能性がある値段の相場を不動産会社とよく相談した上で決めます。
2.リフォームしないで売る場合
家の状態が芳しくない、設備が古すぎて使いづらい、使えない、外壁塗装や屋根まで葺き替える必要があるなどリフォームに数百万~1000万円単位で掛かりそうな場合はリフォームせずにそのまま売り出すほうが良いでしょう。
そこまでリフォーム代をかけてもそれをカバーできるほど価格は上がらない可能性が高くなるためです。
②築30年~40年の家の売り方
- 実需向けにリフォームして売り出す
- 実需、または収益物件としてリフォームしないで売り出す
著者の不動産賃貸業の経験則でいうと、このくらいの築年数であればまだまだ住める家も多い状態。
ただし築30年後半以上になってくるとそこそこの修繕やリフォームが必要になるケースが多いです。
状態にもよりますが、解体して土地売りするほどではなく、しっかり家として売れるケースは多く、住宅ローンを使った実需のお客さんも購入する方が普通にいらっしゃいます。
なのでこの場合も上記と同様、リフォームしてから売るか、リフォームせずに売るかを費用と相場価格と比較しながら不動産会社と相談の上決定していきます。
実需向けで売るのか、それとも収益物件で売るのかはこの築年数あたりが境になってきます。
それぞれの売り方や捉え方について記事にしていますので参考にしてみてください。
③築40年~50年の家の売り方
- 収益物件・古家付き土地としてリフォームしないで売り出す
- 解体して更地で売り出す
- 不動産買取
1.収益物件・古家付き土地としてリフォームしないで売り出す
築年数が40年を超えてくると住宅ローンを使った実需のお客さんは極端に減っていきます。
また家自体にもほとんど価値がなくなったと判断されやくすくなります。
こちらも状態によりますが、収益物件として売却することを検討してみると良いでしょう。
収益物件であれば(価格次第ですが)不動産投資家は十分許容範囲内として見てくれます。
またその場合はリフォームはほぼしないで売り出すのが良いでしょう。リフォームにお金をかけるくらいならその分売り出し価格を安くしたほうが売りやすくなります。
「古家付き土地」として売り出すことでリフォームや解体の費用が必要なくなるのもメリット。
またあくまでも「土地売り」なので後々の責任問題(瑕疵担保責任)が問われることもありません。
ただしその分価格を抑えて売り出す必要がある点がデメリットと言えます。
2.解体して更地で売り出す
築年数が50年近くなり、建物としても使えない可能性が高くなってきた場合は買取、場所によっては更地売りも視野に入ってきます。
雨漏りが酷い、全体的にシロアリにやられている、基礎部分のダメージが大きい、地盤沈下による傾きがあるなど修繕費が膨大になったり、そもそも修繕しても使用不可な場合は売れないため取り壊すしかありません。
もちろん解体費を出す資金がなければ「古家付き土地」として売り出すのも問題ありません。
ただし立地条件がいい場所の場合は更地売りしたほうが確実に高く売れることは押さえておいてください。
更地売りのデメリットとしては、もし売れない期間が長引いた場合、建物付きと比べて固定資産税が2~6倍へにグンと上がります。
また市街化調整区域の場合や再建築不可の土地の場合は原則建物が建てられないため、本当に土地として利用価値があるのかどうかを事前に見極める必要があります。
そのためまずは「古家付き土地」として売り出し、買主が解体を希望したら更地にする、という方法も取れるでしょう。
④築50年以上の家の売り方
- 収益物件・古家付き土地としてリフォームなしで売り出す
- 解体して更地売り
- 不動産会社に買取してもらう
著者も沢山物件を見てきましたが、50年以上ともなると痛み具合が相当激しくなってきます。
もちろん所有者さんがこまめにメンテナンスや修繕、リフォームを施している物件の場合は全然生きている家も沢山ありますし、もしご自身の家がそうであれば普通に収益物件としてでも売れていきます。
ただし売り出しされている物件というのは(価格帯によりますが)、やはりそれ相応の状態が多いでしょうし、直すよりも売る、という選択肢を取る人が多いでしょう。
売り方としては状態によって収益物件として、建物が使えないと判断できたら古家付き土地で。または解体更地売り。
不動産買取は最後の手段で
もし状態が劣悪でかつ市街化調整区域、または再建築不可物件、心理的瑕疵物件などの場合は買取してくれる不動産会社がいますので、最後の手段として使います。
最後の手段というだけに相当な値段で二束三文で買い叩かれる可能性大だと思っておいて良いでしょう。
それでも持ち続けて無駄に固定資産税を払うよりはマシですね。
不動産買取については下記記事を参考にしてみてください。
古い家の売り方別メリット・デメリット
ここまで築年数別の売り方についてご紹介してきました。
おさらいも含めてそれぞれのメリット・デメリットについて一覧にしたのが下記。
メリット | デメリット | 築年数 | |
実需向けにリフォーム | 高く売れやすい | リフォーム費をカバーできるとは限らない | 20~30年 |
実需向けにリフォームなし | リフォーム費が 必要ない | リフォームした場合より確実に安い価格になる | 20~40年 |
収益物件でリフォーム | 高く売れやすい | リフォーム費がかかる | 20~30年 |
収益物件でリフォームなし | リフォーム費が 必要ない | 相場以上の価格にはなりづらい | 20~50年 |
解体して更地売り | ・瑕疵担保免責 ・立地次第で高く売れる | 解体費がかかる | 40~50年 |
不動産買取 | 最も早く売れやすい | 売却金額は最低 | 50年以上 |
それぞれ一長一短がありますが、一番大切なのは「総合的に結果高く売却できるかどうか」、次に「この状態なら売れる確率が高くなるかどうか」にかかってきます。
実需向けか投資家向けか、リフォームをすべきか、解体すべきか、買取にだすかなどは媒介契約を結んだ不動産会社と事前にじっくり相談しながら決めることが重要。
もちろんそれがベストではない場合もあったり、途中で方向転換したほうがいいと判断する場面にも出くわしますので、いくつかの売り方のパターンを想定しておくとより迅速に売ることができます。
古い家を売るときにリスクや問題を避けるための注意点
経過年数が経っているほど、今の家とは違い売る前に注意しておくべきポイントがあります。
後々トラブルになる可能性があるので、古い空き家売却の際に気をつけておきたい重要な項目です。
①土地の境界がない、または曖昧な場合
著者も築古戸建を見に行くと境界がない物件によく出くわします。むしろ高い確率で境界がありません。
もし境界がない場合は2つの方法が挙げられます。
- 測量して境界を打ってもらう
- 境界非明示を重要事項説明書に盛り込む
1.測量して境界を打ってもらう
基本的には売買前に土地家屋調査士に依頼をして境界の杭を打ってもらった上で売却します。
売買契約書には一般的に「売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、隣地との境界を現地において明示する」と記載されます。
費用については土地の形状や大きさによりますが35万~80万円ほどかかります。
2.境界非明示を重要事項説明書に盛り込む
境界線非明示、つまり境界なしでも文句を言わずに買いますよと買主が意思を示した場合に境界なしで売買されることも多々あります。
これはその分買主がリスクを負う形になるため、その分売却価格を下げて対応することが多いです。
収益物件の場合、買主はできるだけ安く買いたいと考えているため境界非明示でも受け入れがちですが、これがもし隣地とのトラブルになった場合にはやや大変です。
そして建て替えをする場合には境界非明示での売買はお互いに辞めておいたほうが良いとも言えます。
下記のようなケースも有るようです。
したがって、「境界を非明示にする」ということは、不法行為責任を前提とした契約条項であるため、当然にも、無効とされるでしょう。
仲介者はこのような契約条項を提示して売主とともに、売買契約をして、買主が損害を被った場合、仲介者は売主と連帯してその損害賠償責任を負うことになるかもしれませんね。
引用:境界非明示の不動産契約は有効か?
②上下水管が細いために水道工事が必要
著者も築41年の戸建を購入した時に経験しましたが、古い家の水道管が細くて水圧が弱い場合があります。
最近では20mmが一般的ですが、昔は13mmが使用されているのが一般的でした。
今ではお風呂やキッチンに加え、洗面台など水を出す場所が増えたためにできるだけ20mm圧の水道管を使うほうが好まれます。
また水道管自体が錆びたり劣化したりして赤錆が出たり、家の中を這わせて通っている箇所に亀裂が入って漏れているケースもありました。
これは床を開けてみないとわからないケースが多いのですが、古い家の場合は少なからず可能性があることを知っておく必要があります。
③畳を新品に交換するとカビが生える可能性
もしリフォームをして売り出す場合、古い家だと和室も多いですよね。
畳がボロボロだから新品にリフォームするのもよいですが、畳は安くても1枚1万円以上します。
そんな時に表替えという方法で表面の藁だけを交換すれば約3,000円/枚で済みます。
著者もリフォームをする時にこの方法をよく行うのですが、気をつけなければいけない点として「畳を新しくするとカビがとても生えやすい」という点。
これはなかなか著者も困っているのですが、特に1Fで空気の通りが悪い、湿気が多い場所だと高確率で生えてきます。
せっかくリフォームしたのに、内覧が入ってお客さん候補が来たのにカビで真っ黒…(経験ありです)なんてことになったら売れるものも売れません。
対策としては、交換したらすぐに一度掃除機をかけて、30分ほどしたら雑巾で乾拭きをします。この時水拭きには絶対しないでください。
水拭きだと畳が水分を吸収してカビ発生を助長してしまいます。
いろいろなカビ対策があるので、畳屋さんと十分相談した上で張替えしてみてください。
新耐震基準(1981年)は今さら変えられないためとにかく売れる確率を高める
建築基準法施行令の改正によって新しい耐震基準(いわゆる新耐震基準)が施行されたのは、1981年(昭和56年)6月1日。
これ以前に建てられた建物は旧耐震基準となっています。
「旧耐震基準だと売れづらい」などと書いているサイトがたくさんありますし、確かにどちらかといえば旧耐震より新耐震のほうが買う側としても安心でしょう。
でも今さらその建築年数を変えられませんよね?では諦めたほうがいいの?という結論になってしまいます。
ただ著者が日々売買をしている中では旧耐震だからといって売れないなんてことは全く感じません。
むしろ著者は旧耐震基準の古屋を沢山保有していますし、収益物件では日々多くの売買がなされていますよ。
できるだけ高く売るためには一括査定サイトで多くの不動産会社の目を通してもらう
好立地でピカピカの物件であれば引き手数多で放おっておいても向こうから不動産会社が「売らせてほしい」と来てくれますが、築古戸建の場合はそう簡単にはいきません。
つまり、売主自ら 売ってくれる不動産会社の母数を増やすため積極的に動く必要があります。
とはいえ1軒ずつ回るのはナンセンス。断わられることも多いため無駄足が多くなります。
そんなときに使い勝手がいいのが不動産一括査定サイトです。
ネットで情報入力するだけで一気に1000社以上の不動産会社に売却をPRできて、かつ「この物件なら売らせてほしい」という業者が向こうから手を挙げてくれます。
ここでは利用者が多い一括査定サイトを2つご紹介。
①大手から中堅、地元密着までバランス重視な「HOME4U」
築古の木造戸建はアパートやマンションなど集合住宅と比べて売買金額が安くなりがちなため、大手不動産会社に持っていくだけではなく、中小や地域密着型の不動産会社にも依頼しておきたいところ。
その場合に一番おすすめなのが「HOME4U」です。
また「とりあえず査定額がいくらになるのかだけ情報を知りたい」という方法でも使えます。
情報入力欄「机上査定のみ」にチェックを入れればOKなので煩わしさもありません。

まずはこちらの一括査定を使ってみましょう。
②田舎で立地が良くなく売れづらい可能性がある家の場合は「イエウール」
市街化調整区域や再建築不可など条件が悪い場合や、立地条件が悪い、そもそもかなりの田舎で人口密度も低いなどの家なら「イエウール」。
またできれば地元の地域密着型の不動産会社に査定から売却をおまかせしたい、という場合なども同様です。
公式でも下記のように書かれています。
国内の大手不動産会社はもちろんのこと、地元密着型の優良不動産会社など、全国の厳選1600社以上から選択し、お客様に最適な査定価格を提案します。
イエウールでは登録会社数が業界最大で地元密着型不動産会社の登録も多いので、上記のような条件で考えている場合はこちらを使ってみましょう。
まとめ
家が古くても売れるものは全然売れますし、時に予想以上の価格で売れて驚く場合ですらあります。
特に今は空き家再生に対する社会の関心が高まってきており、新築よりも格安で買える戸建で十分、という若い世代も増えてきています。
トレンドやおしゃれに関心度の高い若い世代のかたたちは、多額の費用で新築を買うよりもその分安く仕入れて浮いたお金でリフォームやリノベーションをかけて自分好みの家に仕上げて生活を楽しんでいる風景もよく見かけるようになりました。
とはいえ関心の高さで言えば、古い家は新築に比べて絶対的に見劣りするのも確か。
であればあとは見てもらえるターゲット顧客層の目にいかに多く触れさせることができるかが鍵になってきます。
1社だけの不動産会社に専任媒介して任せるのではなく、ご自身でも積極的に不動産会社にアプローチして一般媒介で沢山の会社に仲介してもらう方法が良いのではないでしょうか。
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