自宅を一般向け実需で売るのと収益物件として売るのではどっちが高く売れるか?

売却するなら実需向けかそれとも収益物件として売るか?

自宅を売却する時に大切なのが「誰に向けて販売するのか?」という点、考えたことがある人もいるのではないでしょうか。

この時、対象となるのは大きく分けて「実需向け」と「投資家向け(収益物件)」の2つになります。

ではどちらのほうが高く売れやすいのか、またそれぞれの売り方について、不動産投資を生業にしている著者の経験からお伝えします。

ターゲットとなる顧客(買主候補)を設定するのはとても重要

例えば戸建一つとってもその条件はさまざま。

東京23区なら人口減が確定している日本でもまだまだ需要は途絶えません。対して人口がどんどん減っていくような地域で高く家を売るのは難しい。

つまり物件に合わせてお客さん候補となるターゲットは異なるわけです。

都内ではよく見かけますが、戸建なのに30㎡以下しかないような間取りの物件ではファミリー層に売るとなると、たとえ23区でも難易度は上がります。

対して、23区で駅チカ、100㎡を超える建物は価格が跳ね上がってくるため、投資家に売ろうと思っても利回りが合わないため必然的に実需向けへの販売が視野に入ります。

このように、その物件一つをとっても単に相場価格から売り出し価格を出して販売したとしても、買主の絵を事前に描いておくのとそうでないのとでは結果に大きな影響が出てくる可能性が高くなります。

「エスキモーに氷を売る」ではありませんが、適切な人に適切な物件を売るということはとても重要で、それが適切であるほど高く売れる可能性がぐんと上がります。

実需と収益物件の共通項と違いは「ローン利用とその内容」

顧客となる買主候補を決める場合、金額の大小によって影響度合いはありますが、両者に共通しているのが「銀行からの融資を受けて購入する」という点です。

言うまでもないですが、自己利用する、つまり住宅として住むために買う場合は「住宅ローン」ですよね。

対して投資家には「不動産投資ローン」として銀行は貸し出します。集合住宅であれば「アパートローン」、企業として融資を受ける場合は「プロパーローン」などと呼ばれたりもします。

では住宅ローンと投資ローンで何が決定的に異なるかと言えば多く枠でいうと「融資承認の難易度」という点に尽きるでしょう。細かい点でいうと金利や保証人の有無などがそれにあたります。

住宅ローン不動産投資ローン
金利低い※1高い
保証人原則不要原則必要
保証料原則必要原則不要
担保原則対象不動産に第1抵当設定原則対象不動産に第1抵当設定
審査通過率高い低い

※1参照:最新の金利推移と動向(価格コム)

上記一覧の通り住宅ローンは金利が低くて審査通過率が高く、保証人も必要がない、という融資難易度の3大要因の障壁が低くなっています。

つまり住宅ローンのほうが審査が圧倒的に通りやすいということがわかります。

ちなみに超低金利と言われる住宅ローンは、2020年現在で基本1%以下で借りられるケースが多いですが、不動産投資ローンの場合は1%以上が多く、ノンバンク系の場合は4%、5%の場合もあります。

従いまして、実需と投資家向けに売る場合は、前提条件となる融資の降りやすさ(難易度)が決定的に違うということを知っておく必要があります。

住宅ローンが出やすいなら全部実需向けで売ればよいのでは?

住宅ローンのほうが降りやすいなら、売却する物件はすべて実需向けに販売すればいいのでは?と考えますよね。

ところが事はそう簡単ではありません。

実需向けに売るための一番の課題は「その物件が見た瞬間ほしいと思ってもらえるかどうか」です。

ここでは一旦立地や駅徒歩などの条件は置いた上で考えてみてください。

新築が高くても実需でどんどん売れるワケ

たとえばそれが新築であればなんの問題もありません。内装はピカピカ、設備は最新、床も壁もトイレもお風呂もクローゼットもすべて新品、誰も手を付けていません。

だから新築は「物件の種別としては一番金額が高いにも関わらず売れる」のです。

ところが今あなたが売ろうと考えているそのお家は当然ながら中古物件。新築と比べて完全に見落とりするものしかないでしょう。

国土交通省が行なったアンケートで興味深いデータがあります。

新築を購入した方が「なぜ中古住宅ではなく新築を選んだのですか?」の問いに対しての回答結果が下記の通り。

出典:住宅市場動向調査報告/国土交通省

つまり人はロジックで動いているのではなく「なんとなく新築のほうが気分がいいから」という気持ちの問題で動きやすいということを指し示しています。

新築ならほとんどの人が無条件で嬉しいと感じ、価格が高くてもそれが妥当だと思って住宅ローンを組んで購入に至る人が多いというわけです。

パターン別実需(住宅ローン)で売りづらい物件5項目

住宅ローンを使った実需向けの物件として売るのに苦労する物件の条件で代表的なのが下記。

実需向けで売りづらい物件
  1. 大規模修繕や大幅なリフォームが必要な状態
  2. 市街化調整区域や田舎の過疎地物件
  3. 再建築不可物件
  4. 築年数の経過が大きい物件
  5. 駐車スペースがない、または近隣にもない物件
  6. 6LDK以上など間取りが大きすぎる物件

それぞれ順番に見ていきましょう。

1.大規模修繕や大幅なリフォームが必要な状態

例えば雨漏りがしていたり、外壁にクラック(ひび割れ)が多数あったり、家自体が傾いていたり、シロアリにやられていたりなど、数百万円以上のお金をかけて大規模修繕が必要な状態になっている家が売れないことは説明するまでもありません。

また内装がボロボロ、お風呂がバランス釜で古い、トイレが汲取式などの悪条件が重なり全体的なリフォームが必要な物件の場合も売れづらいのは容易に想像がつきます。

もちろん都心の超好立地の場合や誰もが欲しいと思う駅周辺で更に駅チカなどの外的要因があれば、あるいは大規模にお金をかけてもリフォーム代を上乗せしてなお高値で売れる場合もあるでしょう。

でも実際はそんな超好立地に家を持ってる人って多くはありません。

2.市街化調整区域や田舎の過疎地物件

土地にはそれぞれ都市計画法に基づく「都市計画区域」が設定されています。

具体的には「線引き都市計画区域」と「非線引き都市計画区域」「無指定区域」に分けられ、更に線引き都市計画区域の中には「市街化調整区域」と「市街化調整区域」があります。

ちょっと専門用語だらけで分かりづらいですが、この中でも特に市街化調整区域では原則新たに建物が建てられません。

つまり銀行の担保価値もほぼナシと判断されて市街化調整区域に対する住宅ローンは非常に出づらいケースがほとんどです。

ちなみに非線引き区域や無指定区域でも同様の判断がされやすくなります。

ただし自治体によっては市街化調整区域でも開発が認められている、つまり再建築ができる地域もあります。

この点も含め、またご自身の家が市街化区域になっているかどうかも事前にしっかりチェックしておきましょう。

ちなみに田舎の過疎地域はほとんどが市街化調整区域になっているはずですが、こちらも合わせて要チェックを。

調べる方法は自治体の担当部署に確認できます。

3.再建築不可物件

その名の通り再建築ができない物件のことを「再建築不可物件」と呼びますが、これも基本的に住宅ローンが付きません。

2の市街化調整区域もそうですが、100%絶対に住宅ローンが付かないわけではなく、例えばノンバンク系の住宅ローンなら承認されることがあるのですが、基本金利がものすごく高くなるので結果利用する人が極端に少なくなる、というのが実情です。

銀行はその物件に対して担保価値があるかどうかを重視してみています。担保として扱うことが出来づらい再建築不可物件だとやはり実需向けに販売できる可能性はグンと下がることに。

ちなみに再建築不可物件の売却については下記でもまとめていますので参考にどうぞ。

4.築40年以上の築古物件

建物にはその構造によって法定耐用年数が決まっています。

建物の構造別耐用年数
  • 木造:22年
  • 軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm以下):19年
  • 軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超4mm以下):27年
  • 重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超):34年
  • 鉄筋コンクリート造(RC):47年

耐用年数をオーバーしている場合、投資用ローンでは極端に融資が付きづらくなりますが、住宅ローンは問題なくつくことが多いです。

でもそもそも築年数が40年、50年と経過している建物に対してこれから長年住むつもりで住宅ローンを組んで購入する人はどうしても限られてくるでしょう。

5.駐車スペースがない、または近隣にもない物件

これは立地や条件、買主の考え方にもよるので一概に売れないわけではありませんが、マイホームを購入する層はファミリーが主流。

特に駅徒歩が20分以上とか小さいお子さんがいるとか、周りに生活必需品を取り揃えるお店が徒歩圏内にない場合はどうしても車が必要になります。

もちろん近隣に月極駐車スペースがあれば問題ないケースも多いですが、それでも敷地内に駐車場がある場合とない場合ではどうしても競争力に欠けます。

ましてや近隣にも駐車場がない物件の場合はやはり売れ残っていく確率が高くなるので、価格を下げて対応していく必要があります。

6.6LDK以上など間取りが大きすぎる物件

間取りや平米数が通常の3LDKや4LDKであれば売れやすいですが、6LDKを超えてくると途端に売れづらくなってきます。

もちろん地域に影響を受けたり2世帯住宅を検討している層に対しての需要はゼロではありませんが、それでも絶対母数が少ないため長期戦は覚悟しておく必要があります。

実需では売れない物件でも収益物件として売るなら可能性あり

上記に上げた5項目に該当してしまう場合でも特に悲観する必要はありません。

たとえ築年数が50年を超えていても、駐車場がなくても、そして住宅ローンが付かない市街化調整区域や再建築不可物件であっても投資家は条件さえマッチすれば積極的に購入しています。

ただしこの「条件さえマッチすれば」という点がネックで、基本的に投資家は実需消費者とは異なりできるだけ安く買うことを最優先にして物件を探しています。

投資対象ですからその物件を買ってより大きな収益を上げていくことが目的ですのである意味当然ですよね。

投資家は相場利回りを最重視している

例えばあなたの物件が1500万円で売りだしたとして、その物件を賃貸に出した場合に取れる家賃が1ヶ月10万円だったとします。

10万円×12ヶ月÷1500万円×100=8%(表面利回り)

もしこの近隣類似物件相場の利回りが8%前後であれば投資家はこの物件を購入することに対して十分検討の余地ありとして購入意欲を示す人もいるでしょう。

逆に近隣類似物件の相場利回りが10%を超えている場合はどうなるでしょうか。これは年間で取れる賃料(120万円)を10%で割り戻せば価格が出ます。

120万円÷0.1=1200万円

つまり周辺相場に合わせた利回りになる価格でなければ、よほど他の魅力がない限り購入検討の土台にすら乗らない可能性が高くなるというわけです。

買主としては実需で売るなら1500万円で売れたかもしれないのに、300万円も値下げをされて納得が行かないという気持ちになるでしょう。

けれども実需で売れないなら値下げをして売るか、それでも売れない、または実需では売れづらいパターン5項目に当てはまるような物件の場合は、投資家に買ってもらうという選択肢になっていきます。

不動産投資家がほしいと考えている条件

不動産投資家は利回りを最重視していると書きましたが、実は他にも「これなら欲しい!」とすぐさま思い、好条件と捉える項目があります。

不動産投資で人気のある3大条件
  1. 利回りが高い
  2. 土地値(路線価や実勢価格)が高い
  3. 立地がよい(都心駅チカなど)

もしこの3つが取り揃った場合、文字通り秒速で売れます。もちろん細かい数字は立地に影響を受けますが、相場と比較して誰が見ても良いと捉えられた瞬間に蒸発します。

つまり、先に上げた実需向けで売りづらい5条件、

  1. 大規模修繕や大幅なリフォームが必要な状態
  2. 市街化調整区域や田舎の過疎地物件
  3. 再建築不可物件
  4. 築年数の経過が大きい物件
  5. 駐車スペースがない、または近隣にもない物件
  6. 6LDK以上など間取りが大きすぎる物件

これらであっても条件が格段に良ければすぐさま買付が入り、あまりにも好条件の場合は数千万、下手したら億単位でも現金で買われていくことさえあるのです。

だから実需向けでは全然売れなかった物件でも全く悲観することなく売却することは可能です。

ただし繰り返しになりますが、投資家にとって好条件ということは、売る側にとっては売却金額をどんどん下げるしか他に方法がない、という相反する状況が絶対的に生まれるわけです。

不動産業界では、不動産会社、売主、買主の3者がまるで海中に揺らめく海藻のごとく利益相反の世界が日夜繰り広げられています。

投資家は実需向け売却を狙っている

業者を含めた上での不動産投資家は不動産投資のプロであり、どうしたら保有物件を高く売ることができるのかを熟知しています。

そしてリフォームについても業者や職人さんと提携した上で日常茶飯事で行なっているためお手の物。

リフォームのみならずリノベーションレベルでも難なくこなしています。

つまり実需向けで売りづらい物件の1で挙げた「大規模修繕や大幅なリフォームが必要な状態」の物件であっても臆せず購入し、徹底的なリフォーム&リノベを実施します。

実需の人がどういう物件なら欲しいかを理解しているため、それに向けたリフォームを施して「実需向けの相場価格で」売却します。

これまで述べてきたとおり不動産投資家よりも実需向けのほうが高く売れるため、徹底的なリフォームを行ってなお高く売れる前提で行なっているわけです。

それはつまり「高い確率で損をしないための購入金額はいくらなのか」をよく分かっているということ。

下記の記事が参考になります。

Aさんはこの実需向け売却を「成功だったのではないでしょうか」と振り返る。「私自身が言うのもなんですが、投資家からすればこの物件は魅力的には思えず、自分ならもっと厳しい指値を入れていると思います」。

出典:なぜ、投資家は「実需向け売却」を狙うのか/楽待

実需で売れなかった場合は

とはいえ不動産投資家も判断を誤り実需向けでは結果売れずに持て余してしまうケースはゼロではありません。

この場合の処理方法は2つ。

  1. 売却価格を落として売る
  2. 賃貸物件としてオーナーチェンジ収益物件として売る
  3. 賃貸物件で回収しながら空き家になったら実需で売る

どの方法にするかは投資家次第です。手間がかからないのは1の価格を落とすこと。

ただしそれだと損切りになる可能性が高くなるため、2のオーナーチェンジ収益物件として売却するケースも多いです。

賃貸募集をして客付けを行い、しばらく家賃収入を得て資金を補填し、回収可能な金額になるまで貸し出してそのまま入居者がいる状態で売却してしまうわけです。

収益物件として投資家に売る場合、相場観を十分に理解していない人ほどオーナーチェンジ物件を好む傾向にあります。

相場観を理解していないということは価格に対しても甘く見てしまう傾向にあるため、結果として高く売れやすくなる、というわけです。

または家賃を十分に回収できたあとに退去があっても、事前に大規模修繕やリフォームを行なったことで物件価値が大幅に向上しているため、空室のままで表層リフォームを行なって実需向けに売る、という選択肢を取る投資家もいます。

まとめ:まずは実需向けに、売れなければ収益物件として

その物件ごとで実需向けに売るのか投資家向けに売るのか検討の必要は当然ありますが、まずはどんな条件であれ実需向けに売却してみるのは選択肢として入れておきたいところ。

再建築不可でも市街化調整区域でも駐車場がなくても実需で売れる可能性はゼロではありません。

売り出してみてやはり売れ残ってしまった、という場合は最低売却価格を設定した上で値下げをし、それでも売れなければ価格や条件調整をした上で投資家に売る、という流れが良いでしょう。

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